お店で働いてくれているアルバイトの年間給与が103万円を超えるようであれば、経営者としては注意が必要です。
その場合、アルバイトが親や配偶者の「所得税の扶養」からはずれることとなり、損をしてしまう可能性があります。
大切な従業員が不利にならないよう、経営者が知っておくべき扶養の仕組みについて、できるだけわかりやすく解説していきます。
この記事は、私が27年間、企業経理や社会保険業務を行ってきた経験と知識でお話しする意見としてご覧ください
※この記事を参考される方の状況によっては判断が変わる場合がありますので、詳細な内容については、自治体や税務署、有資格者の方に確認してくださいね。
アルバイトが扶養を外れる給料の上限
結論から先に書きます。
従業員のアルバイトやパートさんが稼いだ年間の給料が、
103万円を超えると、本人の親や配偶者の税金が高くなります。
130万円を超えると、払わなくてよかった社会保険料を本人が払うことになります。
くわしく説明していきます。
アルバイトの扶養とは
扶養とは、自分の力だけでは経済的に自立できない人が、親や家族から経済的な援助を受けることです。
例えば「専業主婦・主夫」や「働いていない学生」なんかは、経済的に自立する事はできませんので、配偶者であったり親などから扶養されることになります。
私も現在、奥さんを扶養しています
日本では、このように誰かが誰かを扶養すると、養ってる人の税金が軽減されたり、養われてる人の社会保険料が免除されるシステムになっています。
そういうふうにできています。
アルバイトが扶養されるメリットは2種類
先程述べたように、扶養のメリットは大きく分けて次の2種類です。
- メリット1「所得税の扶養」:養ってる人の所得税が軽減さます。
- メリット2「社会保険の扶養」:養われてる人の社会保険料が免除されます。
具体的な内容はあとで説明しますが、とにかくこのメリットを受けるためには、「養われてる人」が経済的に自立できない人だと判断されることが大前提です。
では「養われてる人」が経済的に自立「出来ている」のか「出来ていない」のかの判断はどうやってするのでしょうか?
その答えは、「養われてる人の年間の給与の合計金額」によって判断されます。
その判断基準となる収入金額は、
「所得税の扶養」
年間給与が103万円超えたら超えたらアウト!扶養からはずれます。
「社会保険の扶養」
年間給与が130万円超えたら超えたらアウト!扶養からはずれます。
このように扶養について理解するには、
「所得税の扶養」・・・103万円の壁
「社会保険の扶養」・・・130万円の壁
が存在することを、まず頭に入れておいてください。
「所得税の扶養」のメリット・・・103万円の壁
メリットの話をする前に、まずは「所得税」のことをよくわからない方のために説明します。
日本では、悲しいかなお金を稼ぐと税金を納めなくてはいけないシステムになっています。
例えば、私はサラリーマンですが、その給料からは毎月税金が天引きされています。
個人事業の八百屋さんは、毎年、稼いだ利益に応じて税金を税務署に払ってます。
非常にざっくりした言い方ですが、個人がお金を稼ぐとかかってくる税金を「所得税」といいいます。
そして、
養っている扶養親族の数によって、養ってる人の税金の負担を軽くしましょうという仕組みを「扶養控除」といいます。
「所得税の扶養」のメリットはこの「扶養控除」を使えることです。
※ちなみにここでは割愛しますが、養ってる人の「住民税」も扶養控除で軽減されます。
私の奥さんはパートで、給与が年間103万円以下のため、私は奥さんを「税法上扶養」しています
私は奥さんを税法上扶養しているので、私の所得税と住民税は、奥さんを扶養していない時に比べると安くなっています(軽減されています)。
これが「所得税の扶養」のメリットです。
何度も言いますが、仮に私の奥さんが年間給与103万円を超えると、この制度はつかえなくなります。
(厳密には配偶者の場合はこの制度の他に、「配偶者控除」または「配偶者特別控除」という、扶養控除とは別の制度が適用されますが、ここでは割愛させていただきます。)
「社会保険の扶養」のメリット・・・130万円の壁
メリットの話をする前に、まずは「社会保険」のことをよくわからない方のために説明します。
ここでいう社会保険とは「健康保険」と「年金保険」の事をいいます。
- 「健康保険」:病気やけがに備える公的な医療保険制度です。
- 「年金保険」:国民年金は20歳以上60歳未満の人が加入を義務づけられている老後のための年金保険です。
両方とも保険ですので毎月保険料を支払わなければなりません。
「社会保険の扶養」のメリットは、扶養されてる人がこれらの保険料を払わなくてよくなることです。
ただし、「健康保険」と「年金保険」の両方を払わなくてよいのは、扶養されてる人が「配偶者」の場合のみです。
それ以外の人は、「健康保険」は払わなくてよいですが、「国民年金」は払わなくてはいけません。
私の奥さんはパート給与が年間130万円以下のため、私は奥さんを「社会保険上扶養」しています。
私は奥さんを社会保険上扶養しているので、私の奥さんは、「健康保険」と「年金保険」の両方を払わなくても、病気になれば保険証を持って病院にいけるし、65歳になれば年金ももらえます。
これが「社会保険の扶養」のメリットです。
結果的に、配偶者は約170万以上を稼がなければ、トータルで考えると手取りが減る「働き損」になると言われています。
あと、アルバイト・パート先の条件によっては「130万円の壁」が「106万円の壁」になる場合もあるので注意が必要です。
106万円の壁になるのは次の全てにあてはまる場合です。
- 会社の従業員(社会保険の被保険者)が501人以上の会社で働いている
- 月収が88,000円以上ある
- 1年以上勤務する予定である
- 1週間に20時間以上働いている
- 学生以外
【具体例】学生アルバイトが扶養を外れる場合
学生アルバイトが給与を稼ぐとどうなるか具体例をみてみましょう。
年間給与が103万円以下の場合
何の影響もありません。
しいていえば、自治体にもよりますが年間給与が93万~100万円超えるあたりから、翌年に住民税がアルバイト自身にかかってきます。
(ただ、これぐらいの収入だと税額は数千円なんのでそんな気にしなくてもいいと思います)
年間給与が103万円を超えると
「所得税の扶養」からはずれることになります。
親が本来控除できるはずだった、扶養控除を受ける事ができなくなり、親の払う所得税や住民税が高くなります。
(学生アルバイトが19歳~22歳の場合は、扶養控除よりさらに控除額が大きい特定扶養控除も受けることができなくなります。)
どれだけの所得税や住民税が高くなるのかは、親の年間の所得によって計算方法が変わってきます。
親の年間所得にもよりますが、扶養してる時と比べて合計10万円以上多く払うようなケースもでてきます。
年間給与が130万円をを超えると
「社会保険の扶養」からはずれることになります。
アルバイト自身が健康保険を毎月払うことになります。
どれだけの金額を払うことになるのかは、下記の手順で確認できます。
「被保険者の方の健康保険料額」から自分の住んでいる都道府県をクリックしてください。
アルバイトが月々もらってる平均給料を「報酬月額」という項目にあてはめて、「介護保険第2号被保険者に該当しない場合」の「折半額」と交差する欄がアルバイトの払うことになる健康保険料です。
【具体例】主婦・主夫アルバイトが扶養を外れる場合
主婦・主夫が給与を稼ぐとどうなるか具体例をみてみましょう。
年間給与が103万円以下の場合
何の影響もありません。
しいていえば自治体にもよりますが年間給与が93万~100万円超えるあたりから、翌年に住民税がかかってきます。
(ただ、これぐらいの収入だと税額は数千円なんのでそんな気にしなくてもいいと思います)
年間給与が103万円を超えると
「所得税の扶養」からはずれることになります。
アルバイトの配偶者が本来控除できるはずだった、扶養控除を受ける事ができなくなり、配偶者の払う所得税や住民税が高くなります。
どれだけの所得税や住民税が高くなるのかは、アルバイトの配偶者の年間の所得によって計算方法が変わってきます。
アルバイトの配偶者の年間所得にもよりますが、扶養してる時と比べて合計10万円以上多く払うようなケースもでてきます。
年間給与が130万円をを超えると
「社会保険の扶養」からはずれることになります。
アルバイト自身が健康保険を毎月払うことになります。
どれだけの金額を払うことになるのかは、下記の手順で確認できます。
「被保険者の方の健康保険料額」から自分の住んでいる都道府県をクリックしてください。
アルバイトが月々もらってる平均給料を「報酬月額」という項目にあてはめて、「介護保険第2号被保険者に該当しない場合」の「折半額」と交差する欄がアルバイトの払うことになる健康保険料です。
また、アルバイトは年金についても自分で支払うことになります。
どれだけの金額を払うことになるのかは、さきほど調べた健康保険料額表に載ってます。
「厚生年金保険料」の「折半額」が払うことになる厚生年金保険料です。
※現在、アルバイトの配偶者の給与から引かれている「健康保険料」や「厚生年金保険料」は、アルバイトが扶養に入ろうが入るまいが引かれる金額に影響しませんのであしからず。
(健康保険料や厚生年金保険料は、扶養している人の給与の大小で決まる仕組みです。所得税と違って扶養の人数は関係ありません)
アルバイトが扶養を外れる給料の上限まとめ
最後にもう一度まとめます。
- 103万円を超えると、親や配偶者の税金が高くなる。
- 130万円を超えると、払わなくてよかった社会保険料を払うことになる。
103万円を超えそうになる前に、従業員としっかり話し合って、今後の労働方針をどうする計画を立て、労働者から信頼される経営者になってくださいね。
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