お店を経営するのに、一日にいったいいくら売上をあげたら儲かるのか?、非常に気になるところですよね。
結論からいうと、1ヶ月の収支の実績があればその売上金額は簡単に計算することが可能です。
これから飲食店を開業しようという方も、必要な売上を予測するのに役に立つ知識ですのでぜひ最後までお読みください。
損益分岐点とは収支がトントンになる売上高のこと
損益分岐点とは、収支がトントン(つまり利益がゼロ)となる売上高のことです。
言いかえれば、「収支トントン分岐点」、「収支トントン売上高」といえます。
例えば、
1ヶ月に100万円の売上をあげるカフェが、1ヶ月に100万円の支出をしているなら、1ヶ月の損益分岐点は「100万円」となります。
このように、経営で「赤字は出ていないけれども利益も出ていない状態」になっている時の「売上高」のことを「損益分岐点」といいます。

損益分岐点をなぜ知っておかなければならないか
飲食店において損益分岐点を把握する目的は、一日の売上が大体「いくらだっら赤字にならないのか」、「いくらだったら儲けることができるのか」を知ることを意味します。
飲食店の経営歴が長い人なら、経験による肌感覚で大体の損益分岐点を把握してると思います。
しかし、開業して間もない人やこれから開業する人は、損益分岐点を知っておかないと目標売上を立てることすらできません。
ここで質問
あなたのお店(もしくはあなたがやろうとしているお店)の「一日の損益分岐点(売上高)」はいくらですか?
この質問に答えられない方はこの記事を読んで「損益分岐点の計算方法」をぜひ理解してください。
今回、数字に弱い方でもできるだけわかりやすく理解できるように心がけました。
私が仮で作った収支表を先にご覧ください
まず先に今回、「損益分岐点」を説明するために、わたしが仮で作成した収支表をご覧ください。
収支表の見方について順番に説明していきます。
科目名と金額の欄を上から見ていってください。
ぺぺきよカフェでは、1ヶ月に130万円の売上があがっています。
次に、経費(変動費)となる、「材料費」や「給料」と「水道光熱費」で1ヶ月に91万円かかっています。
次に、経費(固定費)となる、「広告宣伝費」や「賃借料(家賃)」、「借入金の返済」やその他の経費など、全部で1ヶ月に51万円かかっています。
(変動費と固定費については後でくわしく説明します)
その結果、お店の収支は12万円の赤字となっています。

念のため、上の収支表を計算式で表すと次のようになります。
「売上高」-「変動費合計」-「固定費合計」=「利益」
130万円 - 91万円 - 51万円 = マイナス12万円
収支表では、ぺぺきよカフェは1ヶ月に12万円の赤字を出しています。
さてここで問題です。

予想してみてください。
正解はこちらです。
正解は170万円の売上高でした。
売上高が170万円だと収支がゼロになっているのがわかります。
では、この170万円はどうやって導き出されたのでしょうか?
先に答えを言ってしまうと計算式は次のとおりになります。
計算式
51万円 ÷ (100% - 70%) = 170万円
この計算式は、上図の黄色で塗りつぶされている項目さえ確定させれば、あとは数字をあてはめて計算することができます。
これからくわしく解説していきます。
経費の種類には「変動費」と「固定費」があります
損益分岐点とは利益がトントンになる状態のことなので、計算式で表すと次のようになります。
計算式
売上 - 経費 = 利益(ゼロ)
ということは、
1ヶ月の損益分岐点を知るためには、1ヶ月の「経費」がいくらかかるのかが重要な鍵であることがわかると思います。
経費は「変動費」と「固定費」の2種類の合計で構成されます。
式で表すと次のようになります。
計算式
「経費」 = 「変動費」 + 「固定費」
変動費とは
変動費とは、売上高に比例して増減する経費のことです。
例えば
売上が上がれば、材料もその分使うので材料費が上がります。
売上が下がれば、アルバイトの早上がりなどで従業員給料も下がります。
売上が上がれば、電気ガス水道もその分使うので水道光熱費が上がります。
ここで大事なのは1ヶ月にかかる変動費がいくらになるのかを把握するのに、変動費そのものの数値について考えても意味がないということです。
なぜなら、売上が高い月は変動費も高くなるし、売上が低い月は変動費も低くなるので、その数値は売上の大小によって上下するからです。

結論
1ヶ月の変動費について考えるときは「売上に占める変動費の割合」で考えるようにしてください。
上図の例でいうと黄色で塗られている「構成比」の部分です。
上図の例では、
売上高に対して、
材料費が35%、給料手当が30%、水道光熱費が5%
合計で70%となっています。
この売上高に対する「変動費の合計」の比率(例では70%)のことを「変動費比率」といいます。
ポイント
損益分岐点を計算するためには、まずこの変動比率が何%になるのかを知る必要があります。
変動費比率は、直近1ヶ月の収支の実績があれば、その割合をあてはめれば大丈夫です。
もし1年間の合計実績があるならもっと正確な比率になりますし、これから開業される人は比率を予測してあてはめましょう。
固定費とは
固定費とは、売上高の大小に影響されない経費のことです。
上図でいうと「広告宣伝費」から下に向かって「借入金返済」までの部分です。
例えば、
通信費(電話やネット代)は、仮に売上が1千万円であっても月々の金額は大体一緒です。
賃借料(家賃)は、仮に売上がゼロであっても賃貸契約している限り一定の金額を払わなければいけません。
借入金返済は、金融機関との契約で一ヶ月の返済金額が決まっています。
固定費を考えるには、実績と想像力が大事です。
広告費や消耗品、家賃や借入金返済などにそれぞれ1ヶ月にいくらかかるのか、全てを洗い出してその金額を合計しましょう。
(上図例では合計で51万円となっています)
経費(変動費+固定費)のまとめ
経費(変動費+固定費)についてまとめると次のとおりです。
ここが重要
・損益分岐点を考えるときには経費がいくらかかるか知ることが重要。
・経費は「変動費」と「固定費」からできている。
・変動費は変動費比率(売上に対する変動費合計の割合)を、固定費は1ヶ月にかかる固定費の合計金額を洗い出します

損益分岐点の計算してみましょう
「変動費比率」と「固定費合計」が確定したら、あとは損益分岐点を求める計算式に数字を当てはめるだけです。
その計算式とは、
計算式
「固定費合計」 ÷ (100% - 「変動費比率」) = 損益分岐点(収支がトントンになる売上高のこと)
です。
なぜこのような計算式になるのかは重要じゃないので、ここでは別に知る必要ないです。
そういうふうにできているものだと思って大丈夫です。
実際に先程の例を使ってあてはめてみましょう。
上図の例では、
「変動費比率」=70%
収支がマイナス12万円
となっています。
実際に計算式にあてはめまてみます。
計算式
「固定費合計」 ÷ (100% - 「変動費比率」) = 損益分岐点
51万円 ÷ (100% - 70%) = 170万円
ぺぺきよカフェの損益分岐点は1ヶ月170万円の売上となります。
下表をご覧ください。
売上が170万円になると収支がゼロになっています。
「変動費比率」も「固定費合計」も変化がないのがわかるかと思います。
最後にもう一度計算式を書いておきます。
計算式
「固定費合計」 ÷ (100% - 「変動費比率」) = 損益分岐点

損益分岐点を計算するには、「変動費比率」と「固定費合計」を確定させましょう。
損益分岐点を計算する上での注意点
ここで、上の例では、あなたの給料(生活費)については一切考慮していません。
もし、あなたの生活費が月に30万円かかるとして、それも考慮して損益分岐点を求めたい場合は、
「固定費合計」に生活費30万円を足して損益分岐点を計算してください。
例にあてはめると
(51万円 + 30万円) ÷ (100% - 70%) = 270万円
となり、売上を170万円から100万円アップしないと収支トントンにならないことがわかります。
一日の損益分岐点(収支がトントンの売上高)
一ヶ月の損益分岐点が出ていれば、一日の損益分岐点を求めるのは簡単です。
1ヶ月の売上高を、1ヶ月の平均営業日数で割るだけです。
例えば上図例の、ぺぺきよカフェの1ヶ月の平均営業日数が25日なら、
170万円 ÷ 25日 = 6万8千円
が一日の損益分岐点となります。
まとめ
上のように、一日の損益分岐点を計算した例では、感覚として1日7万円ぐらいの売上が上がれば赤字にはならないということがわかりました。
これから経営をしていく上で、この損益分岐点を知ってるのと知ってないのとでは、経営対策や判断のスピードにおいて雲泥の差がでてきます。
何より精神的な不安が解消されます。
なので、あなたのお店の実態にあった、それぞれのお店の損益分岐点をぜひ計算してみてください。
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収支計画書の作り方については、別記事でくわしく解説していますのでよければ参考にしてください。
飲食店の収支計画書のつくり方と見本(残るお金はいくら?)

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